低分子でいく

低分子でいく 近年、低分子や抗体以外に様々なモダリティが開発され、それによって狙える標的の幅も大きく広がってきています。環状ペプチドは、抗体に代わって経口投与により細胞内タンパク質間相互作用 (Protein-Protein Interaction, PPI)を阻害するアプ…

やることは変わらない

やることは変わらない 環状ペプチドは、抗体のようにタンパク質間相互作用(結合部位が広くて平面)を選択的に狙いつつ、低分子のように細胞膜透過性があり経口投与可能で化学合成による低コスト化も期待できることから、長年注目のモダリティである。 今回…

マジックメチルを狙って入れる_その3

マジックメチルを狙って入れる_その3 以前にメチル基を導入することで立体配座を制御して安定配座を活性配座に近づけて活性向上を達成した事例を紹介しましたが、今回はJTさんによる「メチル基を導入することでInduced fitを引き起こしつつ安定配座と活性配…

lncRNAを狙う低分子創薬

lncRNAを狙う低分子創薬 DNAから転写されるRNAには、タンパク質をコードするmRNAとコードしないncRNAがある。ncRNAには、rRNAやtRNA、miRNAなど様々な機能を持ったRNAがあり、200ヌクレオチド(nt)以上の長さを持つ長鎖ncRNAはlong non-coding RNA (lncRNA)と…

阻害剤を分解剤に変える

阻害剤を分解剤に変える #souyakuAC2023 Novartis社とカリフォルニア大学バークレー校(UCB)のダニエル K. ノムラ教授の共同研究。標的タンパクリガンド(ここでは主に阻害剤)の溶媒露出部位にフマル酸誘導体(3-ベンゾイルアクリルアミド)を付けると標的タ…

マジックメチルを狙って入れる_その2

マジックメチルを狙って入れる_その2 #souyakuAC2023 今回のメチル基導入は、活性向上に寄与していないので正確には「マジックメチル」ではないが・・・。魔法のように目的物を単一で取得している観点ではマジックメチルのようだと言いたい。活性や他のプロ…

マジックメチルを狙って入れる_その1

マジックメチルを狙って入れる_その1 #souyakuAC2023 以前に塩基性を立体的に制御する記事を書いたが、 https://azarashi-panda.hatenablog.com/entry/2022/03/03/064117 もちろん活性においても同様である。今回、置換基を導入することで立体配座を制御し…

暗黒大陸を行く(上陸編)

暗黒大陸を行く(上陸編) #souyakuAC2023 前回の記事では、中外製薬が細胞内PPIを標的とした創薬アプローチとして、中分子創薬の一つである環状ペプチドのプラットフォームを構築したと報告した。環状ペプチドは母核が固定されているため、アミノ酸側鎖を変…

暗黒大陸を行く(出航編)

暗黒大陸を行く(出航編) #souyakuAC2023 現在の創薬モダリティの主流と言えば、もちろん低分子と抗体である。しかし、これらで狙うには難しい創薬標的がある。細胞内のタンパク質間相互作用(PPI:Protein-Protein Interaction)である。ヒト細胞内には、…

細胞治療の低分子化

細胞治療の低分子化 近年、ヒトの免疫に着目した癌免疫療法の研究開発が盛んに取り組まれています。ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑先生の免疫チェックポイント阻害薬や高額薬価で話題になったキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T)療法(最近は…

吸収させない低分子創薬

吸収させない低分子創薬 低分子創薬が他のモダリティ(抗体医薬や核酸医薬など)に対して有利な点の一つとして、経口投与(経口吸収)が容易である点が挙げられる。しかし、標的分子・対象疾患によっては、経口投与しても体内に吸収されない方が都合がいい場…

核酸医薬の低分子化(タンパク質の翻訳阻害)

核酸医薬の低分子化(タンパク質の翻訳阻害) 近年、新規モダリティとして、標的タンパク質の分解を誘導して無くすPROTACやMolecular Glueが注目されている。一方で、核酸医薬のsiRNAやアンチセンスによって標的タンパク質の翻訳を阻害するアプローチも、標…

ペプチド医薬の低分子化…ではない?part1

ペプチド医薬の低分子化…ではない?part1 #souyakuAC2022 中外製薬がイーライリリー社に導出した非ペプチド型の経口のGLP-1R作動薬LY3502970(OWL833)に関して、プロファイルや相互作用解析を読み解きながら化合物取得の経緯を推理した(あくまで個人的な想…

2匹目のドジョウを狙えるpart2(耐性株に効かす)

2匹目のドジョウを狙えるpart2(耐性株に効かす) #souyakuAC2022 Discovery of CH7057288 as an Orally Bioavailable, Selective, and Potent pan-TRK Inhibitorhttps://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.2c01099 ハイライト1)創薬コンセプト:中外製薬のキ…

ペプチド医薬の低分子化

#souyakuAC2022 ペプチド医薬の低分子化 Peptide-to-Small Molecule: A Pharmacophore-Guided Small Molecule Lead Generation Strategy from High-Affinity Macrocyclic Peptideshttps://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.2c00919 ハイライト1)創薬コンセプ…

2匹目のドジョウを狙える

#souyakuAC2022 2匹目のドジョウを狙える Discovery of Small-Molecule CD33 Pre-mRNA Splicing Modulatorshttps://doi.org/10.1021/acsmedchemlett.1c00396 Pfizer社によるRNA創薬(多分)の報告を紹介する。 ハイライト1)創薬コンセプト:低分子によっ…

ちょうどいい反応性の共有結合反応剤

#souyakuAC2022 ちょうどいい反応性の共有結合反応剤 九州大学の王子田彰夫先生からクロロフルオロアセトアミド(CFA)をWarheadとした共有結合性の3CLpro阻害剤の創製研究が報告された。 Discovery of Chlorofluoroacetamide-Based Covalent Inhibitors for…

超スピードで臨床候補化合物を取得するには

#souyakuAC2022 超スピードで臨床候補化合物を取得するには Discovery of S-217622, a Noncovalent Oral SARS-CoV-2 3CL Protease Inhibitor Clinical Candidate for Treating COVID-19https://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.2c00117 先日、塩野義製薬のS-21…

ヘテロ原子が増えて脳内移行性がむしろ改善

#souyakuAC2022 ヘテロ原子が増えて脳内移行性がむしろ改善 中枢神経系(CNS:Central Nervous System)の疾患を指向したメドケムにおいて、化合物の脳内移行性は非常に悩ましい種の一つである。どのような化合物が脳内移行性を示すのであろうか? Eli Lily…

RNA分解誘導から化学構造を思う

RNA分解誘導から化学構造を思う #souyakuAC2021 近年、低分子でRNAを標的とした創薬に注目が集まっており、例えば、成熟mRNAを標的としたタンパク質翻訳阻害やpre-mRNAを標的としたスプライシング修飾、pre-miRNAを標的としたmiRNA成熟化阻害またはRNA分解誘…

ヒドロキシ基の向きを間違えると・・・

#souyakuAC2021 メドケムにおいて、酵素誘導(例えば代謝酵素CYPの発現誘導)は薬物間相互作用(DDI)リスクを高めるだけでなく、自身の代謝を促進して次第に薬効が小さくなってしまうリスクもあります。 酵素誘導の原因として、化合物が核内受容体CAR、VDR…

塩基性を立体的に調節したい

#souyakuAC2021 アミノ基のような塩基性基は、標的タンパク中の負電荷と相互作用したり、化合物の溶解度を上げたり、Vdを上げて半減期を延ばしたり、多くの利点がある一方、塩基性が強すぎると、細胞毒性が強くなったり、hERG阻害やホスホリピドーシス、低膜…

Gene selectiveは狙ってデザインできるか?

#souyakuAC2021 最終日に相応しくないかも・・・。ちょっとフワッとした話で申し訳ないです。 Mitobridge社の選択的PPARδアゴニストである化合物1は、同じ選択的PPARδアゴニストであるGW501516と比べて、『影響を及ぼす遺伝子の数が少なく、毒性が低かった』…

持続性の良い化合物を狙って取得するには?(Binding Kinetics)

#souyakuAC2021 同じ結合親和性(Binding Affinity)でも結合反応速度(Binding Kinetics)が異なると、薬効・動態・毒性のプロファイルが異なる。 例えば、 はやく結合してはやく離れる → キレの良い薬効 おそく結合しておそく離れる → 持続性の良い薬効(S…

低分子Splicing modifiers

#souyakuAC2021 ※詳しくないので誤解していたらすみません。 RNAを標的とした低分子創薬が近年話題ですが、個人的には以下の4つがよく取り組まれているように思います。1)mature mRNAに結合して二次構造を安定化させ、リボソーム内でのタンパク翻訳を阻害す…

低分子で持続的放出(長期作用)

#souyakuAC2021 いつも楽しく拝見するだけの創薬カレンダーでしたが、初めて投稿したいと思います。ブログ作成自体も初めてなので、そもそもちゃんと表示されているか・・・。 薬効を長期に持続させるための化学的アプローチとして、化合物にPEGや多糖類を付…